活動報告書

対象年度: 2023

提出日: 2025年06月27日

国名 ハイチ共和国
学校名 プチゴアーブ小学校
école primaire de petit-goâve
カウンターパートナー ICAインターナショナル文化交流会
報告担当者 市川ゆり
生徒数 310
学校概要 2010年にハイチを襲った大地震は、甚大な被害をもたらしました。首都ポルトープランスを中心に30万人以上の命が失われ、社会基盤や教育インフラも壊滅的な打撃を受けました。学校施設の約75%が崩壊し、地震から2年以上が経っても、60万人以上が仮設テントでの生活を強いられていました。とりわけ山間部に位置するプチゴアーブ地区では支援の手が届きにくく、学校の再建が急務となっていました。 ICAはこの状況を受け、阪神・淡路大震災を経験した日本・兵庫県の県民の皆さまから寄せられた「ハイチ地震兵庫県義援金」を活用し、2011年、プチゴアーブ地区に小学校を建設しました。 この小学校の運営は、地域の基礎医療を担うコミュニティーメディカルクリニックおよび、学校運営を行うヘンリー・ジェラルド・デスグランジ基金(Henry Gerald Desgranges Foundation/HGD)と連携してスタートしました。また、地域で農民支援を行っているSODEPAとも連携し、教育だけでなく、地域全体の生活基盤の強化を視野に入れた包括的な支援体制を築いています。HGDは医療と教育の両面で地域に貢献する団体であり、小学校の管理・維持のための施設管理委員会も立ち上げられ、地元住民や関係団体と協働しながら、持続可能な運営体制を整えています。

支援前の状況


小学校の建設から10年以上が経過し、子どもたちや地域の生活は徐々に落ち着きを取り戻しつつあります。しかし、現在も生活が困窮している家庭は多く、地域全体としては依然として厳しい経済状況にあります。 プチゴワーブは、首都ポルトープランスから約60km離れた山岳地帯にあり、住民の約90%が農業に従事しています。また、住民の約半数が20歳未満の若年層であり、教育は地域の未来を支える極めて重要な要素となっています。 こうした中、ハイチ政府は現在、「国家学校給食政策(PSNAS)」を通じて、全国的な学校給食プログラムの推進を図っています。これは、子どもたちに安定した栄養を届けるだけでなく、家庭にとっても「学校に通わせることの意義」を高める重要な支援であり、給食の存在が就学継続の大きな動機となっています。 教育に対する地域の意識も少しずつ変化しており、保護者や地域住民の中には「学ぶことの価値」への理解が着実に広がっています。 現在、教育への意欲は高く、多くの生徒が学校に通うことを心から楽しみにしています。 しかし、近年の生徒数の増加により、次のような深刻な設備不足が課題となっています: ・教室の数が不足している ・机・椅子が足りず、1つの机を2人で共有している状況 ・本棚、黒板などの教室備品の不足 ・教職員室にも設備が不足 ・給食室には調理器具や調理用かまどが未整備 住民や保護者、子どもたちは、今回の支援により、より充実した学習環境が整うことを心より願っています。

支援後の状況


今回の支援により、教育環境は大きく改善されました。 ただし、プロジェクトの申請後に国内で政情不安が悪化し、大統領の暗殺事件も発生しました。これにより政府機能が一時停止し、建築許可の取得や運営団体との調整、送金の遅延などが発生し、支援開始までに長い時間を要しました。そうした困難の中でも、政府の協力を得てプロジェクトを無事スタートさせることができました。 支援により、机と椅子用の木材を購入し、地域の職人による手作りの備品が新たに整備されました。既存の校舎は外壁・内壁ともに塗り替えられ、学校全体が明るく清潔な印象になりました。また、屋外運動場兼用の増設教室も設置され、授業や暑い日の活動に柔軟に活用されています。さらに、電気設備とバッテリーの修理も行われ、生徒だけでなく教職員にとっても快適な環境が整いました。こうして、教育の場が大きく改善され、地域社会にも希望と活力をもたらしました。

学校からの反響


先生からのメッセージ

このたびのご支援に、心より感謝申し上げます。生徒数が増える中で、教室や机、椅子の不足に悩まされていましたが、今回の支援により、きれいな校舎と家具が整い、子どもたちはより集中して学べるようになりました。特に、机と椅子が増えて十分なスペースを使えるようになったことは、生徒たちにとって大きな喜びであり、自信と学習意欲の向上につながっています。また、壁の塗り直しにより教室が明るくなり、毎日気持ちよく授業を行うことができています。電気設備の修理も、教師にとって非常にありがたく、教材の準備や作業効率の面でも改善が見られました。私たち教師もまた、子どもたちの笑顔に励まされながら、より良い教育を届けていきたいという思いを新たにしています。皆さまの温かいご支援に、心から感謝いたします。

子ども達からのメッセージ

わたしたちの学校に、新しい教室や机、いすをありがとうございます。前はせまい教室で、ひとつの机をふたりで使っていたけれど、今は自分のスペースがあって、のびのびと勉強できるようになりました。教室の壁もきれいにぬられて、明るくなって、学校に来るのがもっと楽しくなりました。手作りのいすも大切に使っています。先生たちも喜んでいました。これからもたくさん勉強して、大きくなったら自分たちも誰かを助けられるようになりたいです。ほんとうにありがとうございました。

支援前/支援後/その他写真